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カナディアン・パシフィック・カズノコ協会
カズノコについて

1.はじめに

生命発生の母体 − 水産物の摂取により生活習慣病が抑制できる。特に、数の子は生命の発生母体であり、様々な栄養機能成分が凝縮され、その機能性は非常に高い。

北海道を代表する水産物である数の子(ニシンの卵)は、嗜好品としての価値は高いのですが、その栄養効果に関してはコレステロールを多く含むといったマイナスイメージがもたれている程度にすぎません。

しかし、もともと魚卵は、生命発生の母体となるものであり、各種の栄養機能性成分がバランスよく凝縮されている可能性があります。実際、数の子には、生命発生にかかせない栄養素であるタンパク質と脂質が多く含まれているのです。

特に、数の子脂質にはDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)といった機能性の高い栄養成分が非常に多く含まれており、その存在形態もリン脂質として存在するため、さらに強い生理活性が期待できるのです。

表-1は、水産物の摂取が我々の健康にどのような影響をもたらすかを示した好例です。この研究では約17年間にわたって、成人男女(40歳以上)約26万名について追跡調査を行い、水産物の摂取がどれだけヒトの健康に影響を及ぼすかを見ました。

この表では、水産物を毎日食べる人の脳血管疾患、心臓病、高血圧症などで死亡する危険性を1とし、数値が1より高い場合はその危険率がより高くなることを示しています。男女で違いがありますが、いずれの病気も水産物を摂取することで死亡の危険率が低下することがわかります。

表-1 魚介類摂取頻度別性・年齢標準化死亡率比
魚介類摂取頻度
死因
毎日
時々
食べぬ
P
総死亡
1.00
1.07
1.12
1.32
P<0.001
脳血管疾患
1.00
1.08
1.10
1.10
P<0.001
心臓病
1.00
1.09
1.13
1.24
P<0.001
高血圧症
1.00
1.55
1.89
1.79
P<0.001
肝硬変
1.00
1.21
1.30
1.74
P<0.001
胃癌
1.00
1.04
1.04
1.44
P<0.05
肝臓癌
1.00
1.03
1.16
2.62
P<0.05
子宮癌
1.00
1.28
1.71
2.37
P<0.0001
観察人年
1,412,740
2,186,368
203,945
28,943
 
日本全国より6府県を選択、40歳以上の男122,261名と女142,857名(計265,118名)について食生活を調査し、1966年から1982年まで17年間の死亡を調査。この間死亡数は男31,979名、女23,544名(計55,523名)

それでは、こうした水産物の栄養機能性は何に由来するのでしょうか?原因は複数ありますが、最大の原因は水産物に含まれる脂質成分が我々の体にとって非常に有効な生理作用を示すためと考えられています。

特に、水産物脂質に多く含まれるDHAやEPAなどのいわゆる多価不飽和脂肪酸がその主因とされています。

脂質はタンパク質や炭水化物と共に3大栄養素の一つに数えられており、我々が生きていく上で必要不可欠な成分であることはいうまでもありません。

生体脂質の主要成分としては、トリアシルグリセロール(TG;中性脂肪)、リン脂質、コレステロールなどが挙げられ、それぞれ生体を構成する重要な要素です。

TGは主としてエネルギーの貯蔵物質の役目を担い、TG中の脂肪酸の酸化により効率的にATP(エネルギー)が産生されます。

また、皮下に蓄積した中性脂肪は、外界の衝撃から人体を防御する機能も有します。一方、リン脂質やコレステロールは細胞膜の主要成分で、特にリン脂質は膜の構造を維持するのに不可欠な構成要素です。

リン脂質には、分子内に不飽和結合を複数有する高度不飽和脂肪酸(PUFA)が含まれており、これらの脂肪酸は単にエネルギー源として重要なだけでなく、様々な生体機能も有します。

例えば、リノール酸(18:2n-6)、アラキドン酸(20:4n-6)、DHA(22:6n-3)などのPUFAは、生体を正常に維持する上で必須な成分で、我々はこれらの必須脂肪酸を食品から日常摂取しなければなりません。

上記の必須脂肪酸の内、リノール酸は食用植物油から、アラキドン酸は畜肉などから、また、DHAは水産物などから取ることができますが、最近の食生活の変化により、特に若年層を中心にDHAを摂取する機会は減ってきているように思います。

DHA及びDHAと同様水産脂質に多く含まれるエイコサペンタエン酸(EPA;20:5n-3)は、動脈硬化、高血圧、癌といった生活習慣病予防に効果的であることが知られています。

また、DHAはヒトなどの脳に特異的に多く含まれており、脳の機能あるいは精神活動にも大きな影響を及ぼすことも認められています。

DHAやEPAに関する研究は、20年以上も前から行われてきていますが、欧米などでは魚食に対する馴染みのなさが原因となって当初それほど関心は持たれていなかったように思います。

しかし、DHAやEPAの重要性が認識されるようになり、欧米においてもその利用がようやく積極的に行われるようになりました。我が国のように水産物をそのまま口にすることで水産脂質を摂取できる習慣があれば、DHAやEPAを含む食品をことさら開発する必要はないかもしれません。

しかし、欧米、あるいは、我が国においても、最近の食の多様化と食生活の変化を鑑みれば、食品素材あるいはサプリメントとしての水産抽出物の利用、特に、なによりも水産物そのものをいかにおいしくまた健康のために食べていただくかが重要と考えられます。

その意味で、水産物由来機能性成分が凝縮されている数の子の普及は、たいへん大切な事業と考えます。
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